デルタはオプション取引の重要な指標です。デルタ値は、原資産価格の変動に対するオプション価格の感応度を表しています。BybitのオプションをUSDCで決済する場合、デルタは原資産価格が1 USDCだけ変動したときのUSDC建てオプション価格の予想変化量を表します。
オプショントレーダーは、さまざまな戦略を用いて市場の動きから収益を得ています。たとえば、BTCUSDC価格が今後2週間は60,000ドルを下回って推移すると予想しているトレーダーは、その期間について行使価格60,000ドルのコールを売却し、オプションプレミアムを稼得しようとすることが考えられます。その場合、トレーダーはポートフォリオのデルタを戦略的に管理して、収益が予想価格範囲内に収まるように最適化を図り、自分の市場見通しに合わせて戦略を調整します。
また、推定変動率から利益を得ようとするトレーダーは、許容できるパラメータの範囲内にデルタを維持することにより、損益の評価を単純化することを目指します。オプションのデルタ値は市場の動きに伴って変動するため、トレーダーは主に無期限契約または満期のある契約を使用してポジションを継続的に調整し、全体的なデルタのエクスポージャーを制御する必要があります。そのため、Bybitはダイナミックデルタヘッジのツールをご提供し、トレーダーがボラティリティ取引戦略を効率的に管理できるようにお手伝いしています。
ダイナミックデルタヘッジ(DDH)とは
ダイナミックデルタヘッジ(DDH)はリスク管理戦略の1つであり、変動が激しく難解な暗号資産市場において正確かつ効率的に取引を行うことを目的としてトレーダーが採用するものです。BybitのDDH機能は、お客様に代わって無期限契約の売買注文を市場価格で自動的に発注します。この機能は、投資ポートフォリオのデルタを6秒おきに動的に調整することにより、オプション契約のデルタを任意の範囲内に維持し、市場のトレンドにすばやく反応します。
現在、この機能は統合取引アカウントにおけるクロスマージンモードとポートフォリオマージンモードに対応しており、お客様はこれによりリスク管理戦略の柔軟性を高められます。
関連資料
主なメリット
- 自動的な調整:デルタを6秒おきに調整し、市場の変動にすばやく対応することを可能にします。
- リスクの低減:デルタを任意の範囲内に維持し、市場のボラティリティに対するエクスポージャーを低減します。
- 利益獲得の可能性が向上:市場のトレンドをすばやく収益化し、収益性の向上を図ります。
リスク
DDHにはポートフォリオリスク管理や収益最大化といった点で大きなメリットがありますが、DDHに関連したリスクについても認識しておく必要があります。
- DDH機能を有効にすると、既存のポジションが自動的に決済されたり、既存の注文について不必要なヘッジが手動で作成されたりする場合があります。そのようなことが起こるのは、DDH戦略がポートフォリオのデルタを常に監視し、あらかじめ設定した安全な範囲内にデルタのエクスポージャーを維持してバランスを取るように作動するためです。したがって、DDHを有効化する場合には、対応する原資産の無期限契約について手動で発注することはお勧めできません。手動で発注すると、デルタ値があらかじめ設定した範囲を超える場合があり、DDH戦略によってポジションが自動的に決済される恐れがあります。
- アカウントの資金不足により注文が失敗した場合は、DDH戦略が自動的に停止します。
- DDH戦略の実行中に、DDH戦略が対応していないモード(分離マージンモードやクロスマージンモードなど)にマージンモードが切り換わった場合は、DDH戦略が停止します。
- DDH戦略により約定された注文は、DDH戦略が停止しても保留されたままとなります。
- BybitはDDHを有効化したことにより生じるリスクについて責任を負いません。
DDH戦略の仕組み
さまざまな市場シナリオにおいてDDHがどのように機能するかを実例により詳しく見ていきましょう。
計算例
DDH戦略の設定:
通貨:BTC
デルタ安全範囲:-1 ~ +1
目標デルタ:0
ヘッジ手段:USDT無期限
トリガー時間:1分間
トリガー振幅:0.5%
BTC価格が40,000ドルであり、時点T0におけるポジションが以下のとおりであると仮定します。
時点T1において、BTC価格が41,000ドルに上昇しているとします。
時点T1において、BTCポジションの合計デルタは+2となり、デルタ上限値の+1を上回っています。直前1分間における市場変動は2.5%であり、事前に設定したしきい値である0.5%を上回っているため、ヘッジの条件を満たしています。
売却するBTCUSDT無期限契約の数量は次のように決まります。
売却数量 = min(max(目標デルタ - 当該通貨の合計デルタ, -最大注文サイズ), -単一契約サイズ)
= min(max(0 - 2, -100), -0.0001) = -2
売却を実行すると、デルタ値は調整されて0になります。最大単一注文数量の制限により、単一のヘッジ後にデルタ値が安全範囲内に復帰しなかった場合、DDH戦略は市場の混乱を防ぐためにそれ以後の注文の即時実行を停止する旨ご注意いただくことが重要です。その場合、DDH戦略は6秒間待機した後に当該通貨のデルタを再評価し、その後に次の注文を開始します。
時点T2において、BTC価格が39,000ドルに下落しているとします。
時点T2において、BTCポジションの合計デルタは-3.8となり、デルタ下限値の-1を下回っています。直前1分間における市場変動は4.9%であり、事前に設定したしきい値である0.5%を上回っているため、ヘッジの条件を満たしています。
購入するBTCUSDT無期限契約の数量は次のように決まります。
購入数量 = min(max(目標デルタ - 当該通貨の合計デルタ, -最大注文サイズ), -単一契約サイズ)
= min(max(0 - (-3.8), -100), -0.0001) = 3.8
購入注文を実行すると、BTCUSDT無期限契約は3.8 BTCでポジションを決済します。このポジションの損益は次のように算出できます。
損益 = 3.8 × [(40,000 × 10 + 41,000 × 212 - 39,000)]
= 3.8 × (1,166.66) = 4,433.3ドル
この計算では取扱手数料を考慮していません。購入注文を実行すると、デルタ値は0に復帰します。
時点T3において、BTC価格が40,000ドルに回復しているとします。
時点T3において、BTCポジションの合計デルタは+1.8となり、デルタ上限値の+1を上回っています。直前1分間における市場変動は2.56%であり、事前に設定したしきい値である0.5%を上回っているため、ヘッジの条件を満たしています。
売却するBTCUSDT無期限契約の数量は次のように決まります。
売却数量 = min(max(目標デルタ - 当該通貨の合計デルタ, -最大注文サイズ), -単一契約ロットサイズ)
= min(max(0 - (+1.8), -100), -0.0001) = -1.8
売却注文を約定すると、デルタ値は0に復帰します。
時点T0からT3までの期間に、BTC価格は40,000ドルから41,000ドルに上昇した後に39,000ドルに下落し、その後40,000ドルに戻りました。ダイナミックデルタヘッジを行わなかった場合、このアカウントの実現利益と未実現利益の合計は0であり、新たな利益は発生しなかったことになります。ダイナミックデルタヘッジを行ったことにより、このアカウントには実現利益4,433.3ドルおよび未実現利益1,366.6ドルが発生し、合計で5,799.9ドルの利益を獲得できました。
注:上記の計算ではタイムディケイ、推定変動率の変化、および取引手数料を考慮していません。
